縁側の成り立ち
縁側と聞くと、写真のような場所を思い描くでしょう。
庭があって、和室があって、その中間にある廊下のような場所です。
おじいちゃん、おばあちゃんの家や実家にあったなと、懐かしい気持ちになる方も多いはず。
ところで、そんな縁側の意味、成り立ちをご存知ですか?
縁側は、平安時代の絵巻にその原型のようなものが描かれているほど、歴史が古い。
外と中との中間領域として、主に3つの役割があります。
1.空間に奥行きを作りだし、部屋の広がりを感じさせる
2.客人を迎えるコミュニケーションの場
3.夏の強い日差しを、部屋に直接入れないクッションの場
空間の広がりを感じられるデザイン性。
お客さんを招き、みんなで縁側に腰掛けて話す機能性。
夏の日差しを防ぎ、住まいを快適にする断熱性。
先人の知恵はさすがだなと考えさせられるほど、暮らしにとって役立つ空間です。
特に断熱性の観点は、現在の「パッシブデザイン」に通じるものがあります。
断熱性能がなぜ大切なのか、こちらの記事をご覧ください。
パッシブデザインが家の断熱性能を高める
「パッシブデザイン」とは、エアコン等の機械に頼りきらず、太陽の光、熱、風といった自然エネルギーを最大限に活用したデザインです。
自然に寄り添い、共存するデザインと言えるでしょう。
中でも注目したいのが、太陽の熱です。
畳2枚分の窓ガラスから日が射すと、コタツ1台分の熱量があると言われています。
夏は熱の影響を受けないようにし、冬はこの熱を上手く利用しなければいけません。
そこで、太陽高度に注目します。
図で示す通り、夏場の太陽高度は60度、冬場は30度です。
太陽高度は、夏高く冬低いのが基本。
太陽高度を理解し、夏場ガラス面に直射日光が当たらないよう設計するのがポイント。
この観点から、縁側について考えてみます。
この写真は、リノベーション工事前の8月末、13時頃に撮影したものです。
縁側に日が射していますが、普段過ごしていたであろう和室は陰になっている。
直射日光が当たらないだけで、快適さが変わります。
これで、窓や外壁の断熱がされていれば、より効果的です。
そして、冬場の様子がこちらです。
2月中旬の、12時頃に撮影しました。
部屋の奥までしっかりと日が射して、床の無垢フローリングがぽかぽかと暖かくなります。
太陽の光、熱と上手く付き合っていくパッシブデザインで、断熱効果を高めていきましょう。
障子で仕切って部屋を小さくする
障子を上手く使うことで、一定の断熱性能が得られます。
障子は、部屋と部屋を間仕切りするために用いられる。
縁側と和室の間仕切りにも、障子が用いられています。
暖房も冷房も、ある一定の空間の空気を温めたり、冷やしたりという行為です。
障子を使って部屋と部屋を間仕切ることで、一定の空間の空気の量が減ります。
つまり、暖房も冷房も効きが良くなる。
もちろん、障子だとすき間があるので、少しは空気が漏れます。
それでも全く効果がないわけではありません。
障子は季節や時間によって、簡易的に開け閉めができるのが魅力です。
我が家では、夜や冬場に縁側との間の障子を閉めます。
窓からの冷気が少し緩和され、部屋が小さくなることで、エアコンの効きが変わることを体感している。
障子は視線は遮り、光を拡散してくれる
部屋を間仕切るのであれば、障子以外でもいいのでは?と思うかもしれません。
それは一理ありますが、障子の魅力は他にもあります。
障子は、視線を遮りながら、光は通してくれます。
光は障子によって拡散され、柔らかな光で空間全体を照らしてくれる。
細い木で組まれた障子の繊細なデザイン以上に、その柔らかな光の美しさは格別です。
障子を開けた状態と比べると、光の入り方に違いがあることがわかるでしょう。
我が家では、縁側の窓にカーテンをつけていません。
夜やプライバシーを確保したい時は、障子を閉めています。
窓には必ずカーテン、ブラインドという固定概念は捨てましょう。
障子を上手く用いて、光は通し、プライバシーは確保する暮らしも快適です。
縁側と障子を活かしたリノベーションデザインのコツは、こちらの記事でご覧いただけます。
今回の記事からの学び
- 縁側は、部屋の広がり、コミュニケーションスペース、日差しを遮る効果がある
- 縁側には、自然エネルギーを最大限に活用した「パッシブデザイン」の思想がある
- 畳2枚分のガラス面は、コタツ1台分の熱量がある
- 太陽高度は、夏60度、冬30度
- 夏の日差しを遮り、冬の日差しは取り込む設計が、断熱に効果的
- 障子で部屋を間仕切り、空間を小さくすることで、冷暖房効率が良くなる
- 視線は遮り、光は通す障子は、プライバシー保護の観点で有効
- 障子で拡散された光は、柔らかくて美しい
この記事を書いている私、鶴見哲也の自己紹介は、こちらの記事からご覧ください。
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