インスペクション(住宅診断)が大切な理由

不動産購入時のホームインスペクション(住宅診断)が大切な理由不動産探し

中古住宅を購入しようと思います。
最近ホームインスペクションって言葉を耳にするんですが、あれってどうなんですか?

ホームインスペクションは、非常に大切です。
でも、まだ上手くいってない部分もあります。
重要性、上手くいってない理由を、専門家目線で解説しますね。

この記事から学べること
  • リノベーションのポイントは劣化状況
  • 第三者の立場かつ専門家目線で、住宅の状態を調査してくれるのがホームインスペクション
  • 売れにくくなる可能性があり、現状では不動産会社はインスペクションに消極的
  • 民法改正で売主の責任が増すので、インスペクション需要は今後高まる

リノベーションのポイントは劣化状況

以前の記事で、戸建てリノベーション向きの不動産について解説しました。
ポイントとなるのは、建物の劣化状況です。
劣化状況次第で、リノベーション費用が大きく変化します。
そこで、劣化状況を知る有効手段が、ホームインスペクション(住宅診断)です。

ホームインスペクション(住宅診断)って何?

ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者の立場かつ専門的な視点で住宅の状態を調査し、改修時期やおおよその費用についてアドバイスする専門業務のことを指します。
ホームインスペクターは、工事により修繕をすることはありません。
(注:インスペクションと別途契約で行うことはあります。)
調査に特化したプロフェッショナルです。
病院で例えるなら、工事により修繕してくれるのは、手術ができる大学病院。
ホームインスペクションは、定期的に健康診断に行く、かかりつけのお医者さんです。

ホームインスペクションのポイントは、第三者かつ専門家目線で、状態を判断することです。
リフォーム(修繕)する側の目線と、第三者として調査に特化するのでは、調査の視点が変わります。
リフォーム目線は、お客さんの要望で直すことが大前提です。
劣化がひどくても、リフォームして欲しい気持ちが頭をよぎり、
「直せません。できません。」
が非常に言いにくいのが本音。
一方で、調査に特化したインスペクションでは、冷静な判断がしやすく、本当に難しい状況を素直に伝えることができます。
また、リフォームで売上が上がるのか、調査だけで売上が上がるのかという立場の違いは、伝えられる内容に大きく影響するでしょう。
従来、インスペクションのような調査を専門にした業態が認知されていませんでした。
そのため、調査だけに金銭を支払うことに、少し抵抗があるかもしれません。
しかし、現在は正しい情報を正しく知ることに価値があります。
リノベーションを考えている方は、積極的にホームインスペクションを利用すべきです。

不動産屋がインスペクションに消極的な理由

宅地建物取引業法が2018年4月に改正され、不動産会社に以下の3点の義務が課せられました。

  1. 媒介契約(住宅を売買仲介するための契約)を締結する際に、インスペクション事業者を斡旋できるかどうかについて告知する義務(34条の2 第1項第4号)
  2. 重要事項説明(売買する際に必ず伝えておかなければならない項目の説明)の際に、インスペクション内容についても説明する義務(35条 第1項第6号の2)
  3. 売買契約が成立した際に、建物状況について売主・買主双方が確認した事項を記載した書面を交付する義務(37条 第1項第2号の2)

法文なので、わかりにくいですね。
端的に言うと、こういうことです。

1.インスペクション業者を、斡旋できるかどうか説明しなければならない。
2.インスペクション済みなら、その内容を伝えなければならない。
3.インスペクションの事実を、書面にして渡さなければならない。

最も注意すべき点が、1の斡旋できるかどうかの説明義務です。
説明義務であり、実施義務ではないことがポイント。
要は、インスペクションしなくても売れるということです。
皆、ユーザーファーストの善良な不動産会社であればいいのですが、不動産会社が収入を手に入れられうのは売れた時。
そうなれば「売れればいい、売れたら終わり」と考える方もいらっしゃいます。
そのような方にとってインスペクションは、中古住宅として売る価値がないということを証明する不利な資料になってしまう可能性があるのです。

また、インスペクションが余計な経費、余計な時間と感じる不動産会社がいるのも事実です。
建物を解体して、新築用の土地として売った方が、手っ取り早いと考えている場合もあります。
現状の法制度では、インスペクションは買い手にとって好都合、売り手にとっては不都合と感じることが多いのです。
そのため、インスペクションが積極的に行われない、むしろ不動産会社は避けがちになっています。

ホームインスペクションが大切な理由

売主に不利、買主にとって有効なインスペクションですが、今後その重要度は高まります。
なぜなら、2020年4月に民法が改正になり、売主の瑕疵(かし)担保責任の考え方が変わるからです。
(注:瑕疵とは不具合を意味する)
これまで、中古住宅を購入し、何らかの不具合を発見した場合、1年以内に売主に対応を求めることができました。
しかし、これは任意規定であり、実際は契約書に売買契約から3ヶ月以内のみ対応という旨が書かれる状況でした。
2020年4月の法改正により、売主の瑕疵(かし)担保責任という考え方が無くなり、契約内容に適合しているか否かが問われる形になるのです。
法律用語が並んでいて、理解しにくいと思います。
わかりやすく極端に言うと、
・法改正前:3ヶ月経てば、法的な責任は問われない
・法改正後:発見した時点で、3ヶ月以上経過していても、売主に責任追及ができる
ということになります。
売主が、後々のトラブルを防止するためにも、いい加減な物件を売れない、売って終わりの関係性にできないということです。
不動産売買のルールーが厳格化されるので、流通が促進されるかはわかりません。
しかし、買い手にとっては、不具合の少ない中古住宅を間違えなく購入できる可能性が高まります。
法改正も相まって、買い手ににとっても売り手にとっても、ホームインスペクションが大切になってくる時代が、目の前まできているのです。

今回の記事からの学び

  • リノベーションのポイントは劣化状況
  • 第三者の立場かつ専門家目線で、住宅の状態を調査してくれるのがホームインスペクション
  • 売れにくくなる可能性があり、現状では不動産会社はインスペクションに消極的
  • 民法改正で売主の責任が増すので、インスペクション需要は今後高まる

この記事を書いている私、鶴見哲也の自己紹介は、こちらの記事からご覧ください。
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