費用と効果を考慮した断熱リフォームの方法

費用と効果を考慮した断熱リフォームの方法断熱・気密
この記事から学べること
  • 日本の住まいの80%は、ヒートショックの可能性がある
  • 「寒さは万病のもと」で、人生100年時代においては、断熱リフォームが必要
  • 断熱リフォームするには、1500万円の予算を見込んでおく
  • 断熱リフォームに合わせて、耐震補強水廻りリフォームを行うのがおすすめ
  • 断熱リフォームは費用対効果で考え、工事費と光熱費で検討すると効果的
  • 断熱の効果を発揮させるため、気密性能を高めなければならない
  • 自分に合った住まいに暮らせば、ストレスがなくなり円満な家庭になる

なぜ断熱リフォームが必要なのか

断熱された住まいの必要性は、体験してみないと疑問に思わないかもしれない。
しかし、断熱が必要な理由は明確。
それは日本の住まいの約80%が、ヒートショックの可能性があるためです。
特に高齢者は、血管が弱く、ヒートショックによる血圧の急変化に耐えられない。
その結果、脳卒中や心筋梗塞で亡くなってしまいます。
実は、冬場の入浴中の死亡者数は約17,000人で、これは交通事故による死亡者数の約4倍にもなる人数です。
詳しくは、こちらの記事でご確認下さい。

ヒートショックのリスクがあるにも関わらず、断熱の無い住まいで暮らしているのはなぜか。
それは、日本が経済先進国の中で、断熱においては後進国だからです。
「寒さは万病のもと」という意識が希薄なのかもしれません。
しかし、これからの人生100年時代において、健康で快適な住まいで暮らすことが重要。
そのために必要なのが、断熱リフォームです。

断熱リフォームの費用の目安

断熱リフォームが大切と言われても、費用の目安がわからないから不安なはず。
そこで、40坪以下の規模であれば、ズバリ金額の目安は1500万円です。
1500万円あれば、水廻り、耐震補強、断熱補強までできます。

断熱リフォームは、内装か外装を壊さなければいけません。
断熱材は、壁の中に仕込むものなので当然です。
せっかく壁を壊すのであれば、耐震補強までするのがいいでしょう。

古民家リノベーションの耐震補強

写真にある斜めに入っている材料が筋交い(すじかい)です。
職人さんの右側と左側で、筋交いの木の色が違います。
右側の濃い色は昔からあったもの、左側の明るい色は今回の工事で入れたもの。
耐震補強工事では、筋交いを入れる以外に、構造用合板という板を張ったり、柱や梁との接合部を専用金物で補強します。
写真を見ての通り、耐震補強も壁を壊して行う方が、工事をしやすいことがわかるでしょう。

お風呂のリノベーション

そして、断熱リフォームと耐震補強と一緒に行うといいのが、水廻りリフォームです。
例えば浴室は、壊さないと断熱リフォームできないので、取り換えは必要不可欠。
キッチンやトイレについては、専門家目線で見れば大型家電のようなものです。
15年や20年で故障し、それぐらい経つと修理する部品が残っていません。
断熱リフォームは、大掛かりな工事になり、住みながらは難しいので、そのタイミングでついでに水廻りもリフォームするのがオススメです。

断熱リフォーム以外にも、いくらでどのぐらいのリフォーム、リノベーションができるか、こちらの記事にまとめてあります。

断熱リフォームの費用対効果

断熱リフォームの費用の目安がわかった所で、その投資価値があるのか検討しなければいけません。
そこで注目するのが、光熱費の違いです。
新築でも、リフォームでも、みなさん工事費という名の初期費用ばかり気にしています。
しかし、車を買う時に燃費を気にするのと同じで、住宅においては光熱費が燃費です。
光熱費は、断熱性能のレベルで異なります。
よく高気密高断熱と耳にするかもしれませんが、そこには表に示すよう様々なレベルがある。

基準次世代省エネ基準
(性能等級4)
Heat20 G1Heat20 G2Heat20 G3
冬の最低の
体感温度
8度10度13度15度
Q値 / UA値2.70 / 0.871.90 / 0.561.60 / 0.461.07 / 0.26
エアコンの効果頭と足元に温度差
窓も結露
個別空調が効率的
全館空調は非効率
エアコン1台で
全館空調が可能
最小機器で家中
空調が効く
対応できる企業どこでも可
ローコストレベル
どこでも可
一般的なレベル
地域トップの
性能特化企業
全国トップの
性能特化企業

断熱性能のレベルの違いにより、どれぐらい光熱費に差が出るのか。
自邸をリノベーションする際に、断熱工事費と光熱費の関係をシミュレーションにより検討しました。
その結果がこちらです。

ローコスト
住宅レベル
工務店
平均レベル
断熱特化
工務店レベル
断熱性能次世代
省エネ基準
ZEHHeat20G2
UA値0.870.600.46
冬場の最低の
体感温度
8℃9〜10℃13℃
工事費75万円110万円185万円
工事費の差±0+35万円+110万円
年間光熱費17.6万円13.9万円12.5万円
年間光熱費の差±0-3.7万円-5.1万円
10年での差37.0万円51.0万円
15年での差55.5万円76.5万円
20年での差74.0万円102.0万円
25年での差92.5万円127.5万円

わかりやすくグラフにしてみましょう。
工事費に当たる初期投資は、性能が高いHeat20G2の方が高くなっています。
しかし、光熱費で徐々に差が縮まり、22年で次世代省エネ基準と並ぶ。
その後は、高性能な住まいの方がお得という計算になります。
ちなみに、次世代省エネ基準とは、2020年に国が義務化を予定していた、言わば日本における断熱の最低限の基準
最低限の基準で作れば、20年ちょっとしかお得ではない。
ローンは30年とそれ以上の期間で組んだので、高性能を選ばない理由は見当たりません。

断熱リフォーム工事費と光熱費の関係

ただし、このシミュレーションはリノベーションで、なおかつ家の全体ではなく部分的な断熱。
そのため、一般的な見解と少し異なる部分があるのでご注意ください。
新築であれば、
・ローコストレベルは、10年以内
・工務店平均レベルは、20年から30年
・断熱特化工務店レベルは、30年以上
暮らすのが、お得と言われています。

より詳しい断熱リフォームの費用対効果の検証は、こちらの記事を参考にしてください。

効果を高めるために気密性能が大切

断熱性能は、断熱材自体の性能と材料の厚みで決まります。
高断熱にする方法は、高い性能の断熱材を、厚く設けることです。
しかし、ただ厚くすれば性能を発揮してくれるわけではありません。
性能を発揮するには、適切な施工により気密性能が必要不可欠
だから、高気密高断熱という言葉をよく耳にするわけです。
具体的にどのようにするかというと、すき間というすき間をとにかく埋めます。

床と壁の間に発泡ウレタン断熱材を充填

床と壁の間を、ウレタンフォームで埋めていきます。
写真のように吹き付けた後、しばらく時間が経つとぷくーっと膨れ、すき間が埋まる。

床の下地の構造用合板に気密テープを貼る

床の下地の合板の継ぎ目に、気密テープを貼っていきます。
材料と材料の継ぎ目は、必ずすき間ができるので、気密テープは基本中の基本。

他にも、埋めるべきすき間があるので、こちらの記事でご確認ください。
新築、リフォーム、リノベーション、どの現場でも工事のチェックポイントがわかるはずです。

断熱リフォームにより生活は快適に変わる

断熱の必要性を理解する。
工事の費用を知る。
費用対効果に合わせた性能を選択。
適切な気密施工をを行う。

ここまでした上で、いざ生活を始める。
すると、寒かった無断熱の実家や低断熱のアパートと比較し、生活がガラッと変わりました。

・光熱費がシミュレーション通り安くなった
・余計な暖房機器や暖かい服がいらなくなった
・ストレスが減り、夫婦ケンカのない円満家庭になった

1つ目と2つ目は想定通りでしたが、3つ目の円満家庭になるのは想定外でした。
住まいが変われば、広い意味で生活が変わることを実感。
これは、賃貸や建売住宅にはない、自分にあった住まいを手に入れられたからです。
自分にあった服、車などを選ぶよう、自分にあった住まいを選ぶことはとても大切。
私は、リノベーションで自分にあった住まいを手に入れられました。

より具体的な生活の変化は、こちらの記事をご確認ください。

今回の記事からの学び

  • 日本の住まいの80%は、ヒートショックの可能性がある
  • 「寒さは万病のもと」で、人生100年時代においては、断熱リフォームが必要
  • 断熱リフォームするには、1500万円の予算を見込んでおく
  • 断熱リフォームに合わせて、耐震補強水廻りリフォームを行うのがおすすめ
  • 断熱リフォームは費用対効果で考え、工事費と光熱費で検討すると効果的
  • 断熱の効果を発揮させるため、気密性能を高めなければならない
  • 自分に合った住まいに暮らせば、ストレスがなくなり円満な家庭になる

この記事を書いている私、鶴見哲也の自己紹介は、こちらの記事からご覧ください。
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